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2005年12月26日

アルツハイマー病:最も残酷な泥棒

アルツハイマーは高齢者を襲う最も残酷な病気です。身体の指令センターを侵食するこの神経退行性疾患は、まず記憶を盗み、次に身体機能を奪い、5年から15年の過程で最終的には人生まで奪ってしまいます。
この疾患の治療法は見つかっていません。アルツハイマー病は、500万人を人質にとっており、その大多数は70歳以上の高齢者です。アメリカにおける死亡原因の第4位を占め、65歳以上の高齢者のうち10パーセントがアルツハイマー病を発症しており、85歳でこの数は50パーセントまで上昇すると推定されています。
アルツハイマー病は、社会の負担額が最も高い疾患でもあります。直接的、間接的なコストは、年間1000億ドルを超え、2050年までに1500万人以上の被害者を出し、国家の財政負担を容易に現在の4倍に膨れ上がらせるでしょう。

この病気を引き起こす遺伝性の遺伝子変異を有する少数の人を除き、ほとんどの場合は家族歴には関連がなく、その原因は明らかにされていません。


ジョン・トロノヤウスキ医師
「確かに、数々の研究で、アルツハイマー病の発症リスクを高める外的な要因があることが示されている。例えば、ボクサーは、一度も頭部外傷を負ったことのない人と比較してリスクが高い。またエストロゲンを服用していない閉経後の女性は、服用している女性と比べて、アルツハイマーに罹患する可能性が高い」

ペンシルバニア大学神経変性疾患リサーチセンターで、共同ディレクターを勤めるジョン・トロノヤウスキ医師は、こうコメントしています。同医師は、ペンシルバニアのアルツハイマー病センターの理事長でもあります。

アルツハイマー病の顕著な特徴は、アミロイドプラークと呼ばれる不溶性の異常たんぱく質の沈着、および神経原線維のもつれによる脳の病変にあります。正常な脳内物質が異常な状態になり、神経原繊維変化という髪の毛の様な糸くずに変化し、脳内に凝集がおこると病変をきたすと考えられています。脳細胞が互いに会話をしなくなると萎縮し、記憶や論理思考の衰えの原因となります。

未だアルツハイマー病の予防法はありませんが、発症を遅らせるためにできること(例えば遺伝学など)はいくつかあります。

家族にアルツハイマー患者がいる場合は、この疾患に関与する遺伝子検査を受けることを考慮しましょう。アルツハイマーの遺伝子を有することが、必ずしもこの疾患に罹患しやすいということではないことを念頭においてください。どんな検査オプションがあるか主治医とよく話し合うことです。

○頭脳ゲーム

新しいスキルを習う、クロスワードパズルやクイズなど頭の体操に挑戦し、脳の健康を維持します。例えば、子供の宿題を手伝う、他の人の学習を手伝うといったことも知的筋力の刺激になります。

○学校へ行く

より多く教育を受けるほど、アルツハイマーを発症する可能性が低いことが統計で明らかにされています。長時間授業を受けることが、脳内のプラーク形成やもつれの実質的な予防になるかどうかは科学者達にもわかっていませんが、記憶や見当意識障害の進行を遅延させるという証拠はあるのです。

○頭を保護する

頭部外傷や、短時間の意識不明でさえ記憶を奪うことができます。無用な怪我の防止には、いかなる時でも、ヘルメットやシートベルトを着用する時間を惜しまないことです。

○賢く食べて、健康生活

葉酸とメンタルヘルスには強い関連性があることが研究によって証明されています。緑の葉野菜、シリアル、パンに多く含まれるこの栄養素は、先天性欠損症の予防だけでなく、脳の主要な学習や理論を司る領域の萎縮も防ぐとのことです。1日に最低でも400ミリグラムまたは、マルチビタミン剤に通常含まれる量の摂取を多くの医師が推奨しています。脳卒中とアルツハイマー病には強い相互関係があるので、定期的な運動、血圧のチェックおよび禁煙などを実行し、脳卒中を起こす可能性を減らしましょう。

○友人との付き合いを続ける

家族や友人と付き合いのある高齢者は、孤独を好む高齢者より、アルツハイマー病の兆候が現れる時期が遅いことが研究によって明らかにされています。元気を保ち、精神的退化を遅らせるためには、大切な人達と一緒に過ごすことです。

現時点でアルツハイマーに対する最善の薬といわれるものでも、その効果は薄い、とトロノヤウスキ医師は述べています。より効果的な治療法は、具体的な研究段階にあり、すでに開始されている予防注射を伴う臨床治験などが行われています。

注目すべき研究では、脳内の沈着物の生成に必要な酵素をブロックする方法や、プラーク形成後に沈着物を一掃する「プラーク-バスティング」物質の発見に焦点を当てています。

近年の研究は、「現在から5年後のアルツハイマー病の治療を変える強力な一撃を持つ。」とトロノヤウスキ医師は予測しています。同医師は、ペンシルバニア大学神経変性疾患リサーチセンターにおいて行われるカンファレンスでアルツハイマー病の最新リサーチの発表も行いました。

まだ疑念はありますが、一般的に科学者らは、ベータアミロイドと称する物質が、アルツハイマー患者の脳内に異常な沈着物の生成および凝集を促進する触媒であると考えています。彼らは、ベータアミロイドを生成する2つの酵素の発見という、大きな飛躍をとげたのです。科学的サークルのセオリーは、この酵素のうち1つもしくは両方をブロックできれば、ベータアミロイドの生成を減少させることができ、アルツハイマー病の進行の遅延、あるいは発症の予防が可能かもしれないというものです。

製薬会社の多くは、2つの酵素の抑制剤の研究開発に着手しています。エラン社は、抗体アプローチをテストする臨床治験を実施中です。エラン社の研究者であるアイバン・リーバーガーグ医師は、アルツハイマー患者が過剰な量のベータアミロイドを生成しているというセオリーには賛成していません。それらを十分な速さで除去することは不可能だと、彼は考えています。
同医師のワクチン接種は、蓄積物を一掃するために脳細胞内の反応を誘発させる抗体を生成します。一旦アミロイドが抗体で標識されると、そのアミロイドの検知、分解、掃除ができるのです。

「マウスの実験では非常に良い結果を出した」と同医師はコメントしています。「罹患前のマウスに免疫性を与えると、意外なことに、マウスの脳内にはベータアミロイドが生じない。すなわち、マウスにおいては、事実上、アルツハイマー病の罹患を予防ができるのだ。既に中程度のアルツハイマーを発症しているマウスの場合、この抗体は病気の進行を止めたり、場合によっては後退させたりすることができる。マウスの実験ではいつも成功するのだ。しかし、マウスは人間とは異なる。よって人間に同じ治療をした場合、どのような結果が出るかはわからない。マウスでの実験結果にわずかでも類似した結果を出すことができたとすれば、アルツハイマーの治療において劇的な突破口になるだろう。」

免疫療法のバリエーションとして、the Center for Neurologic Diseases at Brighman and Women's Hospitalではケアギバー(介護者)が容易に投与できることから、経鼻ワクチンの研究に取り組んでいます。シンシア・レメル医師によると、免疫ブースターを使用すると抗体の生成が劇的に増加し、著しいプラークの減少が見られました。また、ワクチンを投与されたマウスの血中アミロイドが増加するという予測外の発見もあったのです。これは、抗体が、損傷した物質を脳内から引き出し、クリアランスのターゲットとされている血中に留めたということを示しています。

アルツハイマー病の治療は、未だ科学の追及の手を逃れていますが、研究者達は、脳内のプラークともつれの根本からの拡大をストップさせる魔法の弾丸を発見する日はもうすぐそこまで来ていると信じているのです。

投稿者 : kenkoo 13:35

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