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2006年02月13日

運動と筋力トレーニング  ~ 始めるのに遅すぎるということはない

高齢者にとって、変化に対抗する最良の薬は運動です。オーストラリアにあるシドニー大学スポーツ医科学の教授であるマリア・フィアトローネ・シン博士は、始めるのに遅すぎることはないと言います。

フィアトローネ博士とタフツ大学の同僚は、ボストンにある高齢者用ヘブライ・リハビリテーション・センターに住む80代~90代の虚弱な男女に対して、ウェイトを使った筋力トレーニングのプログラムを開発し試験を行いました。そのほとんどが関節炎と心臓病を患っていて、複数の薬物を服用していました。大半が歩行器を使用し、ほとんど全員が転倒の経験がありました。

10週間以内で、患者たちが全面的に改善したことに調査員は気付きました。全被験者が力を付け、速く歩いたり、階段を上ることが容易にできるようになりました。元気のなかった人は社交的になり、栄養補助食品を取っていた人は食欲が増しました。運動をしなかったグループは大量の筋肉が減少し、栄養補助食品からは何の効果も得られませんでした。

この徴候は明らかでした。また、医師は錠剤の処方に時間をかけすぎて、高齢者を元気づける役割を果たさないという、医学会に向けた老人病専門医の言葉もうなずけます。


フィアトローネ博士が研究について詳しく述べてくれました。


Q:運動が健康によいことは誰もが分かっていますが、運動は高齢者にとってどんな特別な効果があるのでしょうか?

A:高齢者のための運動と、若い人たちのための運動はそれぞれ異なります。高齢者用の運動プログラムは、特に病気や身体的な障害の予防を目的としたもので、若い人用の運動は見た目をよくすることを目的としています。


Q:どんなタイプの運動が高齢者には必要なのでしょうか?

A:全ての運動があらゆる目的に適しているとは限りません。何かの薬のようなものと考えて取り入れる場合、運動はとても有効なものだと考えられます。鍛えたい部分と関連付けて、運動を医薬のように処方する必要があります。例えば、歩行が困難だったり、よく転んだりする歩行障害のある人、変形性関節炎で骨折しやすい人は、筋肉の強化やバランスのトレーニングが必要でしょう。心循環器疾患の予防が運動の目的である場合、有酸素運動が必要になるでしょう。


Q:筋力トレーニングは高齢者にとって最適な運動なのでしょうか?

A:筋力トレーニングを、虚弱体質を改善するためだと見なしています。私たちは虚弱の原因に注目しています。加齢に伴う筋力の衰えは虚弱が原因です。ですから必要な運動は筋力トレーニングなのです。ストレッチやウォーキングは筋肉に対して効果がありません。もしその人の弱さが、病気ではなく、健康状態や生活の質にある場合、筋力トレーニングが適しているのです。コア・バランスに問題がある場合は、バランストレーニングが適しています。バランスを整える運動の例として、太極拳やヨガがあります。バランスを整える運動では、1本の脚で立ったり、平均台を歩いたりします。


Q:定期的に歩くだけで十分ではないですか?それともウォーキングの効果は評価されすぎているということですか?

A:普段は経験したことがないことを成し遂げたり、新しいことにチャレンジするためには、全てのトレーニングに挑戦してみるべきです。歩いている時に、かかとからつま先を使って歩くといったような、より難しい方法に挑戦しない限り、あまり効果は出ません。しかしながら疫学的文献に、ウォーキングは死亡率、心循環器疾患、糖尿病、脳梗塞の減少に関係していると書かれています。元気に歩くほど効果があるのです。運動トレーニングは薬剤のようなものだと考えなければいけません。全ての人間に、同じ種類、量、強度のものは通用しないのです。


Q:高齢者にとって運動は危険ではないでしょうか。特に虚弱体質だったり、骨が弱い人には危険なのでは?

A:最も致命的なのはカウチポテトになることです。もちろん運動プログラムを開始する前に、医師に相談することをお勧めします。しかし、慢性症状や加齢に関連した病状には、必ず運動が必要となるはずです。


Q:高齢者にとって、運動は身体的だけでなく精神面にも利点をもたらすのですか?

A:運動は、うつ病に対して効果的に働きかけます。同様に、ウェイトリフティングと有酸素運動も効果的です。うつ状態の時には70パーセントの効果があります。高齢者は薬に対して耐性がないことが多々あるので、抗うつ剤を取るより向いているのです。しかしながら、運動が認知症を治せるということを示した研究はありません。これは、集中力の持続時間に関して役立つもので、運動をしている人は認知症になりにくいという証明もいくつあります。


Q:どうやって高齢者を説得しロッキングチェアーから立ち上がらせて、ウェイトトレーニングを始めさせればいいでしょうか?

A:自主性と生活の質は、原動力の要因です。他人に依存せずに自分から始めれば、数週間で筋力トレーニングの効果が出るのは明らかです。人は自転車やウォーキングで行う運動をやめてしまいやすいのに対し、筋力トレーニングを長期的に続ける人は多いのです。


Q:プログラムを始めて、効果を得るのに遅すぎるということはありますか?

A:始めるのに遅すぎるということはありません。80代~90代で始める人も多数います。高齢者でも少しの余力を持って参加すれば最適ですが、例え余力がなくても運動は効果があるのです。


●すばらしい50代を迎える

1.健康上の問題を、運動の障壁と考えるのではなく、運動をする理由として考えましょう。

2.運動を避けずに、運動する機会を日々見つけるようにしましょう。何をするにも運動に変えましょう。物は引きずらずに運びましょう。1本の脚で立ってみましょう。1日を過ごしている時にも、いろいろな活動を運動するチャンスに変えることができます。

3.残りの人生のために、毎日できると思える何か楽しいことをしましょう。定期的に実行できるものがいいでしょう。そのことが健康にメリットをもたらすのです。

投稿者 : kenkoo 09:45

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