がん細胞に選択的に作用し、治療の効果と日常の安心を支える

がん治療で大切なことは、「がんに打ち勝つこと」だけでなく、「治療を続けられる体調を維持すること」にもあります。高濃度ビタミンC点滴療法は、がん細胞の増殖を抑えると同時に、全身の体調を整え、治療との相乗効果を引き出す補完的療法として注目されています。

高濃度のビタミンCは、点滴によって静脈から直接体内に届けることで、経口摂取では到達できない血中濃度を実現します。この超高濃度の状態では、ビタミンCは抗酸化物質としてではなく、がん細胞に対して選択的にダメージを与える「酸化的ストレス」を誘導することが知られています。正常な細胞には影響を及ぼさず、がん細胞だけに作用するため、安心して継続できる治療法です。

さらに、ビタミンCは免疫機能を高め、抗がん剤や放射線治療による副作用を軽減する働きも期待されており、標準治療との併用が世界各国で進められています。また、QOL(生活の質)を維持しながら治療を続けたい方にとって、心身のバランスを支える力強い味方になる可能性があります。高濃度ビタミンC点滴療法は、がん治療に新たな可能性をもたらす、現代的な補完医療のひとつです。

高濃度ビタミンCによる抗がん作用のメカニズムを解明

当クリニックでは、ビタミンCの抗がん作用について注目し、開院当初よりがん治療の一つとして行っていますが、臨床だけでなく研究にも力を入れています。院長・澤登雅一(東海大学医学部 血液・腫瘍内科 客員講師)は、同大学の川田浩志教授らとともに、高濃度ビタミンCががん細胞の増殖に必要な血管新生を抑制する新たな作用メカニズムを発見しました。

院長が所属する東海大学血液腫瘍内科における研究として、以下の論文が発表されています。

  • ビタミンCが、白血病細胞の血管新生を阻害して腫瘍の増殖を抑制すること (PLoS One 2013 Apr 23;8(4):e62717)
  • 再発悪性リンパ腫患者を対象とした第一相臨床試験で、抗がん剤と高濃度ビタミンCの併用が安全に行えること (Tokai J Exp Clin Med 2014 Sep 20;39(3)111-116)-
  • 体内鉄含有量を減らしたマウスでは、高濃度ビタミンC単独投与よりも腫瘍の増大が抑えられること(Sci Rep. 2018 Nov 26;8(1):17377) などを研究報告しています。

高濃度ビタミンC点滴療法ががんに効くメカニズム

過酸化水素の誘導
高濃度のビタミンCは過酸化水素の生成を促進し、がん細胞を選択的に死滅させます。
がん細胞はカタラーゼ活性が低く、過酸化水素の影響を受けやすい。
一方、正常細胞はカタラーゼ活性が高いため、ダメージを受けにくい。
がん細胞内グルタチオン濃度の低下
KRAS/BRAF変異を持つ大腸がんでは、変異によりGlut1が増加し、酸化型ビタミンCが、がん細胞内に多く取り込まれる。これによりグルタチオンの消費が増え、抗酸化力が低下し、酸化ストレスが上昇して細胞死を誘導。
HIFタンパク(低酸素誘導因子)発現抑制
高濃度ビタミンCはHIF1αの発現を抑制し、血管新生を阻害。
これにより腫瘍細胞への栄養供給を妨げ、がん細胞の増殖を抑制する。
TET遺伝子の活性化
ビタミンCはTET遺伝子を活性化するため。TET遺伝子の変異が原因で起こる白血病の進行を抑える。
コラーゲン合成の促進
ビタミンCによるコラーゲンの増加が、がん細胞の浸潤や転移を抑制する。
免疫作用の強化
ビタミンCは獲得免疫を増強し、免疫チェックポイント阻害剤の効果を高めることが報告されている。

高濃度ビタミンC点滴療法で期待される効果

がん細胞を死滅させる効果
この療法単独でどの程度の効果があるかについてはまだ十分なデータはありません。効果例は報告されていますが、今後、臨床試験で検証する必要があります。現段階では、すべてのがんに同等の効果があるとはいえませんが、標準治療と併用することで治療効果を高める可能性や、標準治療で効果が得られない症例には単独でも行う価値はあると思います。
がん治療としては副作用が少ない
ビタミンC療法でみられる副作用は、抗がん剤・放射線の副作用に比べれば非常に軽度です。抗がん剤や放射線療法は、腫瘍細胞のみならず、正常な細胞にまでダメージを与えてしまうというマイナス面があります。高濃度ビタミンC点滴療法は、この点においては、従来のがん治療とは異なり、ほとんど正常細胞にダメージを与えることはありません。治療に伴う負担も少なく、日常生活への影響が比較的少ない点も、この療法の特長といえます。
高濃度ビタミンC点滴療法は、一般的に安全性が高い治療法とされています。ビタミンC自体には抗がん剤のような強い毒性はなく、適切な管理のもとで実施すれば、重篤な副作用が生じるケースはまれです。ただし、心不全や腎不全、著しい胸水・腹水がある場合など、水分負荷が体調の悪化につながる恐れがある場合には、事前の評価が必要で、点滴療法を行えない可能性があります。
抗がん剤や放射線療法との併用によるメリット
高濃度ビタミンC点滴療法は、放射線療法や抗がん剤治療、免疫チェックポイント阻害剤と併用することで、補助的な役割を果たすことが期待されています。たとえば、放射線治療では程度の差こそあれ皮膚障害がほぼ必発とされますが、本療法を併用することでそのダメージが軽減され、皮膚の回復が早まる可能性があります。
また、抗がん剤治療に伴う副作用、とくに脱毛や肌の変化など、外見に関わる変化は精神的なストレスにつながることも少なくありません。高濃度ビタミンCには、特定の抗がん剤の副作用を緩和し、同時に抗腫瘍効果を高める可能性が示唆されており、心身の負担を軽減する補完的な手段としても注目されています。
さらに、栄養状態や全身のコンディションを維持することは、がん治療を計画通りに進めるうえで重要な要素です。体力や栄養状態の悪化は、治療中断や薬剤量の調整といった制約を生みかねません。高濃度ビタミンC点滴療法は、こうした状況を予防・改善し、治療継続を支える一助となります。
また、疼痛緩和においても臨床的な報告があり、抗炎症作用(間接的なステロイドの産生の促進)や骨代謝への良好な影響など、複数のメカニズムが関与していると考えられています。
抗ストレス物質としての効果
がんの診断や治療は、身体的負担だけでなく、大きな精神的ストレスも伴います。病気そのものに加え、抗がん剤や放射線治療による副作用、今後への不安など、患者さんは心身ともに多くのストレスを抱えることになります。こうしたストレスは、体内でビタミンCを大量に消費する原因となり、免疫機能の低下を招きやすくなることが知られています。免疫力が落ちることで、さらにストレスへの耐性も弱まり、悪循環に陥る可能性もあります。がん患者さんにおいては、健康な状態に比べ、より多くのビタミンCが必要とされる理由がここにあります。ビタミンCを適切に補うことは、免疫機能のサポートだけでなく、精神的な安定を保つうえでも重要な役割を果たします。高濃度ビタミンC点滴療法は、こうしたストレス環境下における身体のバランスを整えるための一つの手段として、注目されています。
がんという病気が与える身体的な負担に加え、「がんと診断された」という精神的ストレス、さらには抗がん剤や放射線治療による治療ストレスは、患者さんにとって大きな負担となります。これらのストレスは体内のビタミンCを消費し、免疫力の低下を招きます。その結果、さらにストレスに弱い状態に陥ることも少なくありません。がん患者さんは、心身のストレスを緩和し、免疫機能を維持するためにも、通常より多くのビタミンCを必要とするのです。高濃度ビタミンC点滴療法は、こうした状態をサポートする一つの選択肢となります。
免疫力が高まる
ビタミンCは、免疫機能を維持するうえで重要な役割を担う栄養素です。不足すると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、傷の治癒が遅れたりする可能性があります。ビタミンCを適切に補うことで、こうした合併症のリスクを軽減し、回復力の維持につながると考えられています。

こんな方におすすめ

標準治療の副作用を軽減し、治療効果を高めたい方
抗がん剤や放射線治療との併用で、相乗効果や副作用の軽減が期待できます。
進行がん・再発がんなど、次の選択肢を模索している方
標準治療が難しいケースにおいて、補完的治療として活用されることが増えています。
治療中の体力や免疫力の維持に不安を感じている方
身体への負担が少なく、全身状態の改善や回復力の向上をサポートします。
再発予防や寛解後の体調管理を意識している方
栄養・抗酸化ケアを通じて、がんの再発リスク低減を目指す方に。
生活の質(QOL)を大切にしながら治療を続けたい方
通院しながら治療を受けたい、日常生活への支障を少なくしたい方に適しています。

高濃度ビタミンC点滴療法の具体的な進め方・治療法

基本的な点滴について
投与量:1回あたり50g以上のビタミンCを静脈内投与します。
点滴時間:およそ1〜2時間(投与量によって変動)かかります。
使用製剤:医療用グレードのビタミンC(防腐剤無添加)を使用します。

※ 2025年9月現在Mylan社注射用ビタミンC製剤と日本製駐車用ビタミン製剤をお選び頂けます。

治療の頻度
週2回の集中治療~1か月に1回のメンテナンス治療まで
点滴の頻度は治療経過に沿って医師と相談して決めることになります。

※ 詳しくは「高濃度ビタミンC点滴療法についてよくあるご質問」をご参照下さい。

治療期間の目安
症状や画像所見、血液検査などの評価をもとに適宜相談となります。
治療評価について
【短期評価】病状に合ったビタミンCの適正濃度を設定します。
ビタミンCの血液中濃度が400mg/dl前後に達すると強い抗腫瘍効果が発揮されるので、 点滴投与後にビタミンC血中濃度の採血を行い、ビタミンC投与量を適宜調整していきます。

評価のタイミング

  • 初回から濃度調整期(2~3回)
  • 点滴をはじめてから3か月後
  • 標準治療の治療方針の変更時・体調の変化

高濃度ビタミンC点滴療法の副作用と安全性について

ビタミンCを用いた治療であるため、基本的には安全性が高く、副作用は比較的少ないとされています。
ただし、以下のような軽度の症状が見られることがあります。

溶血
先天的にG6PDという酵素の働きが弱い方は高濃度ビタミンCを点滴すると、溶血(赤血球が壊れる)のリスクがあります。
G6PD欠損症とは
G6PD酵素が遺伝的に欠損している方は、高濃度のビタミンC投与により急性溶血性貧血を起こす可能性があります。
「G6PD」とは「グルコース6リン酸脱水素酵素」の略で、血液中にある赤血球機能を維持する上で非常に重要な酵素です。日本人の約0.1~0.5%の方がこのG6PDが少ないまたは機能が不十分であるとされています※G6PD欠損症は、特定の民族集団(例、アフリカ系アメリカ人、地中海盆地に祖先をもつ人々、アジアに祖先をもつ人々)で発生率が高いです。「G6PD欠損症」は、一度発症すると赤血球が破壊され「溶血性貧血」が体内で起こります。症状としては、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、身体のだるさ(倦怠感)などがあります。症状が悪化すると輸血をする必要があり、最悪の場合には命にかかわることにもなります。
吐き気・気分不快・頭痛・一時的な眠気
大量のビタミンCを点滴投与することで血中浸透圧の上昇・低血糖の症状として起こることがあります。
点滴中に十分に水分をとっていただくことで防ぐことができます。
低血糖症状、低カルシウム血症
ビタミンC点滴により、インスリンが過剰に分泌されて低血糖を起こすことがあります。点滴の前に必ず食事をしてきてください。また、低カルシウム血症はビタミンCがカルシウムを奪ってしまう為です。
点滴中に手などがつる感じがある場合があります。
打撲や外傷直後に点滴を受けた場合、該当部位に一時的な皮下出血や痛みが起こることがある
点滴の数日前に打撲等があった場合、点滴後に同部位に内出血を起こすことがあります。
点滴部位の違和感や血管痛
浸透圧の高い製剤のため起こりますが、痛みがある場合は温めることやマグネシウム製剤の増量・点滴をする血管を変えることで改善します。

高濃度ビタミンC点滴療法を受けられない方

高濃度ビタミンC療法でアレルギー反応を示す方
重度の心不全、腎不全、腹水や胸水のある方
高濃度ビタミンC点滴は、1時間に約500mLの水分が体内に入るため、心臓や腎臓に負担がかかります。心不全や腎不全・腹水や胸水の貯留など、水分制限が必要な方は治療を受けられない場合があります。
G6PD欠損症
先天的にG6PDという酵素の働きが弱い方がいらっしゃいます。 この場合、高濃度ビタミンCを点滴すると、溶血(赤血球が壊れる)する場合があります。
抗がん剤;メソトレキセート、ベルケイドによる治療中の方

診療の流れ

1 電話による初診予約

まずはお電話でお問い合わせください。
電話番号 03-3237-0072

2 医師による問診・診察

治療内容を詳しくご説明し、現在の病状を伺ったうえで、個々に適した治療方針をご提案いたします。
※診療情報提供書は、必須ではありませんが、直近の血液検査データ・画像データ(PET-CT、CT、MRI検査)などありましたらご持参ください。

3 採血 G6PD(グルコース6リン酸脱水素酵素)活性測定

1回の治療で25g以上のビタミンCを点滴で投与する場合は、必ずG6PD活性の有無を確認して、G6PD欠損症でないことを確認する必要があります。 ※すでにG6PD活性検査を受けたことがある場合は、検査結果をご持参ください。

4 高濃度ビタミンC点滴の実施

1回の点滴にかかる所用時間は60~90分程度です。
※投与するビタミンCの量や体調により点滴時間は異なります
※ビタミンCの投与量、治療頻度については医師とご相談いただきます

高濃度ビタミンC点滴療法についてよくあるご質問

点滴の頻度ですが、治療をはじめる時点では週に2回が標準です。抗がん剤や放射線治療と併用される方に対しても、あるいはこの治療法を単独でされる方に対しても、同じ回数で点滴治療を行います。
がんの腫瘍が完全に消失したという段階になったら、半年ほどは週1回の治療を続けます。その後は、半年あるいは3カ月ほど、2週間に1回、その次の段階では月に1回、といったように、だんだん頻度を減らしていきます。
治療の期間については、個々の症例によって変わります。現在、当クリニックで治療を最も長く受けている方で約15年です。その方は現在、腫瘍が完全に消失したという状態で、月1回の点滴を受けています。
なお、高濃度ビタミンC点滴療法を受ける方全員が治るわけではありません。症状や状態によっても異なってきます。

抗がん剤や放射線治療の副作用で吐き気がして食事がとれなかったり、全身状態が低下していたりする方は、2回か3回点滴を受けるだけでも、かなり状態は変わります。元気が出てきますし、合併症の予防にも役立ちます。その意味では、2〜3週間で効果が出るといってよいでしょう。
がん細胞を死滅させるという抗腫瘍効果に限定してしまうと、明確にいつから効果が表れると断言はできません。ケースによって変わりますし、抗がん剤や放射線治療と併用している場合には、それらが効いている可能性があります。ただ、ビタミンCの血中濃度が400mg/dlに達すると、強い抗腫瘍効果が発揮されることが研究によりわかっています。したがって、点滴によってそのレベルまで上げれば、がんを治す効果が出始める可能性が高くなるといえます。

当クリニックでは、悪性リンパ腫と肺の非小細胞がんで腫瘍が完全に消失した例があります。リンパ腫や腎臓がんに効果が高いという報告がありますが、まだ確定的なものではありません。逆に言うと、すべてのがんに対して可能性があります。

ビタミンCの量によって、点滴時間は変わります。たいていは、1〜2時間です。

当クリニックでは、受付時間の10:00〜16:30(木曜日は夜間診療のため、19:30まで)です。

むしろ、併用することで効果が高まります。抗がん剤の効果を妨げることはなく、既存の治療の副作用を軽減させることができるからです。

主治医の先生に事前に説明しておかないと、なぜ治療の効果が上がったのか、なぜ副作用が少ないのか、などといった疑問を主治医の先生が感じる可能性があります。したがって、主治医の先生には、クリニックから、具体的な治療内容の(どのような量のビタミンを投与しているなど)資料を提供します。

ビタミンCの投与が再発を予防したという症例のデータはまだ多くありません。ただ、概念的には、再発の予防に十分役立つ治療法だと思います。

がんそのものはなくならなくても、全身状態や栄養状態の悪化を遅らせることはできます。そういう意味での効果は、必ずあります。実際にアメリカの症例でも、余命6ヶ月と言われていた乳がんの患者さんが、この治療だけで7年間元気にされているケースもあります。

基本的に食事に関しての制限はありません。やってはいけないこととしては、多量の飲酒、長時間の入浴、激しい運動などです。

他の病気を合併していて制限されていることがなければ、何を食べても結構ですし、運動も基本的に制限はありません。

基本的に、ビタミンCそのものに副作用というものはないと考えてよいのですが、高濃度ビタミンC点滴療法では、ごくまれに以下のような副作用が出ることがあります。
(1)点滴刺入部位、あるいは血管に沿った痛み これは比較的多く見られます。ビタミンCの量や点滴の速度、血管の状態などが関係します。大量のビタミンC点滴は浸透圧が高いため、痛みの原因となります。こういった条件で起こる痛みに対しては、温めたり、点滴の速度をゆっくりにしたり、点滴の中にマグネシウムを加えることで対処します。また、点滴という行為に伴う、針を刺すことによる痛みは、普通の点滴と同程度にあります。通常、採血をするのと同じ太さの針を用いますので、特別に痛みが強いわけではありません。
(2)吐き気や頭痛など ときどき見られる副作用ですが、点滴の速度や、患者さんの全身状態などによります。点滴の速度をゆっくりするなどして対応します。
(3)眠気、ボーっとする 比較的よく見られる症状で、おもにビタミンCの抗ヒスタミン作用によると考えられています。花粉症などアレルギーの薬を飲んだら運転をしないでくださいと注意されるのは、そういう薬の抗ヒスタミン作用が眠気を誘うためです。ビタミンCの点滴も、それと同じ作用が出ることがあります。ですから、ビタミンCはアレルギーにも効くのです。
(4)低血糖 低血糖は、ビタミンCとブドウ糖の構造が非常によく似ているために起こります。ビタミンCが点滴によって入ってきたときに、体が、ブドウ糖が入ってきたと勘違いするわけです。そのため、インスリンというホルモンが血糖を下げるために出て、低血糖になってしまいます。これは点滴が始まって5〜10分以内に起こることが多いのです。私のクリニックでは、低血糖を一例だけ経験しています。低血糖を防ぐために、患者さんには、点滴前には必ず食事を摂るようにお願いしています。 また、問題なのは、測定した血糖値によってインスリンを注射する量を決める糖尿病患者さんの場合です。糖尿病で血糖値を自分で測定する方がいらっしゃいますが、その際に用いる簡易血糖測定器(酵素電極法によるもの)も、ビタミンCをブドウ糖と勘違いして、本来の血糖値よりも高い数値が出してしまうことがあるからです。たとえば、本当の血糖値が150ぐらいでも250などと出してしまうことがあるのです。ビタミンCをブドウ糖と間違えて、みかけ上高く出ている値を信じて、必要以上にインスリンを注射してしまい、逆に低血糖になるという心配があります。これは、糖尿病で血糖値を測定している人に限っての注意事項になりますが、ビタミンCの点滴後9時間ぐらいはそのような傾向があると言われていますのでご注意ください。
(5)尿路結石 ビタミンCを大量に飲んだり点滴したりすると尿路結石が多くなると言われることがあります。論文で報告されたものに、シュウ酸カルシウム結石による両側尿管結石により尿管閉塞を起こした例がありますが、ビタミンC大量点滴を行っている方に特別尿路結石が多いということはありません。私たちのクリニックでも、高濃度ビタミンC点滴療法を受けていて、結石が多くみられるかというと、これまで一例もありません。 結石については、もともとの素質によることが大きいと私は思います。この点滴を受けたために異常に尿路結石の頻度が多くなるなどということはないと思いますが、高浸透圧の点滴で脱水になりやすいので、もともと結石の既往がある方は、特に、水分補給は十分行う必要があります。
(6)低カルシウム血症 ビタミンCにはカルシウムを体外に出してしまう働きがあり、そのために低カルシウム血症を起こし、身体が震えるなどの症状がでることがまれにあります。このような場合、点滴内にマグネシウムを加えますが、重症の場合はカルシウムを点滴で補充することで対処します。
(7)溶血 第一章の点滴前の検査の項でG6PDとい特殊な酵素を調べると述べたのはこの副作用を防ぐためです。溶血とは、簡単に言うと赤血球が壊れてしまう状態のことです。G6PDという酵素が欠損している人に限って起こるのですが、この酵素欠損は人種に偏りがありアフリカや地中海の周辺に住んでいる人種にほぼ集中して、日本人には非常に稀ですから、まず心配はありません。しかしながら、場合によっては命に関わるような副作用ではありますので、ビタミンCを25g以上投与する場合は、事前の検査が必要です。
(8)鉄過剰 ビタミンCは腸からの鉄の吸収を促進するため、鉄過剰になる可能性があります。ビタミンC大量点滴療法中は、定期的に鉄代謝に関する検査をする必要があります。
(9)有痛性の皮下出血 頻度は多くありませんが、高濃度ビタミンC点滴療法に比較的特徴的な副作用かもしれません。私どものクリニックでは、高濃度ビタミンC点滴療法5000件以上のうち3件経験しています。 それらの患者さんたちのがん種は前立腺がん、肝臓がん・胸腺がんで、いずれにも共通しているのは、血小板数・凝固系検査など出血に関係する検査の異常は認められないこと、出現したタイミングは、すでに20回以上の点滴を経験していて投与量は50〜75gであること、出血部位が穿刺と対側の母指球筋・前腕内側・母指であることなどです。3例ともその後10回以上点滴を行っていますが、有痛性の皮下出血は起こっていません。この出血が起こるまで要した時間は、早い例では、点滴開始後15分で痛みを訴え、その後に出血部位が青あざのようになってきました。ただし、それが重篤かと言われればそのようなことはなく、痛みはあるものの、全例2、3日以内には回復しています。詳細なメカニズムは不明ですが、潜在的にあった打ち身のような場所に過酸化水素によるダメージが加わって起こるのかもしれません。いずれにしても、一般的な血液検査データ上は、明らかな異常は認められません。
また、次のような方は、ビタミンC大量点滴療法を受けることができません。 ビタミンC大量点滴行う場合、短時間に500ml以上の水分が体内に入ります。また、点滴液のph調節のため、重炭酸ナトリウムが添加されています。そのため、うっ血性心不全、腹水、著明な浮腫のように水分過剰、ナトリウム過剰によって病状の悪化を来す恐れのある場合には、この点滴を受けることができないこともあります。