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2007年03月02日

長く楽しく生きる ~100歳以上の長寿者に見られる隠れた遺伝子~

もしあなたが100歳以上の長寿者だったら、数え切れない人たちが、あなたの長生きの秘訣を尋ねてくるでしょう。
健康的な暮らしのおかげだとか、好き放題に生きているからだとか、あなたは答えるかもしれません。しかし、実際のところ、秘訣など分からないでしょう。

100歳以上の長寿者に関して研究をしている研究者たちも、同じ質問を投げかけています。長寿には要因があるはずだと考えているからです。長寿には遺伝子が関係しているかもしれないのです。

●100歳以上の長寿者は“遺伝的に元気”なのか

人の寿命というのは遺伝と生活環境、両方の要因が組み合わさって決まっているのだと、ボストン大学医学部の助教授トーマス・パールス博士は説明しています。

パールス博士は次のように述べています。

「100歳以上の長寿者がそれほど多くないのは、遺伝子か特殊な生活環境が要因だと、我々は考えていました。しかし別の事実が明らかになってきました。長寿者の出現は、惑星が一列に並ぶような低い確率だと私は思っています。長寿者になるには、いろいろな要素が正しく組み合わせられていないといけないのです。」

最近行われた2つの研究で、100歳以上の長寿者は一般の人とは異なる遺伝子を持っていることが判明しました。また彼らの子供や兄弟、姉妹にも、同じ遺伝子が発見されました。

1つめはニル・バルジライ博士(イェシーバ大学のアルベルト・アインシュタイン医科大学加齢研究所所長)のチームによる研究です。博士の研究では、ある特定の遺伝子が血液中の善玉、悪玉、両コレステロールの分子サイズに影響を及ぼすことが分かりました。その遺伝子は、コレステロール値も変化させます。

長寿者とその家族は、この遺伝子を持っている傾向が強く、その影響でコレステロール粒子が大きくなっています。大きな粒子のコレステロールが動脈壁に侵入するのは困難です。そのため100歳以上の長寿者は高血圧や心疾患のリスクが低く、またメタボリック症候群という糖尿病予備軍も少ないのではないかと、バルジライ博士は言います。

2つ目は、パールス博士のチームが行った研究です。この研究では、高コレステロール値に関係があるとされる遺伝子が、見つかりました。そして長寿者には、この遺伝子はあまり見られなかったのです。

2つの研究が遺伝子とコレステロールのかかわりを示していることは偶然ではないはずです。

パールス博士は次のように述べました。

「心疾患は死因の第1位に挙げられるほど重大な病気です。だから一般の高齢者よりもさらに20~25年も長生きする長寿者が、“遺伝的に元気”だという仮説は正しいと言えるでしょう。彼らは一般と比べて心疾患にかかる確率が低いため、100歳まで生きられるのです。」


●遺伝子研究の展望

2人の研究者は自分たちの発見に満足していますが、何よりも未来の研究に道が開けたことを喜んでいます。こういった研究結果が、長寿者と一般の人々との間には遺伝的に大きな違いが存在するという仮説を裏付けることになったからです。

バルジライ博士はこう説明します。

「これまで、この分野の研究では特定の病気に焦点が当てられていました。我々が着目したのは、もっと大きな観点でした。1万人に1人という低い確率で出現する100歳以上の人たちの、どこが特別なのか。この問いがスタートだったのです。」

動物実験では、ある遺伝子を操作されたグループは、通常のグループに比べて、3~6倍も長く生きるという結果が得られました。この結論は人間にも当てはまると考えられます。バルジライ博士によると、この特定の遺伝子が人間にも同じ影響を及ぼすかどうかは、今後の研究で明らかになるということです。

またあらゆる病気から長寿の人たちを守っている遺伝子も、いずれ特定される見込みです。パールス博士はこれを“長寿を可能にする遺伝子”と呼び、次のように述べました。

「こういった遺伝子は存在すると確信しています。原子爆弾に相当するような被害を受けても、100歳まで生きている人たちと実際に会ってきたからです。この遺伝子は私にとって聖杯のようなものなのです。」

遺伝子の働きは、薬物療法にも活用することができます。さらに多くの遺伝子が特定されれば、より効果的な治療法が確立し、製薬会社は副作用のない薬品を開発するでしょう。しかし科学者たちは、遺伝子研究によって人間の老化のプロセスが解明されると信じています。そして結果的に、より健康的に生きるための方法が明らかとなると考えています。

投稿者 : kenkoo 09:51 | トラックバック (0)